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妊娠中のがん治療について解説・抗がん剤治療や手術療法における注意点とは?
日本人にとって身近な疾患である、がん。がんはいつどんなタイミングで発症するか分からない病気です。原因が分からない場合も多く、明確な原因があって発生するケースは少ないでしょう。
今回は、妊娠中にがんが発見されてしまい抗がん剤をはじめとした治療方法を検討している患者さんやそのご家族に向けて、情報をまとめました。抗がん剤治療や手術療法における注意点も解説しますので、参考にご覧ください。
INDEX
妊娠関連がんとは
まずは、妊娠関連がんについて解説します。
妊娠中や出産後一年でがんと診断される状況を、妊娠関連がんと言います。診断や治療方針決定のための検査は基本的に受けられますが、CT検査やMRI検査には注意が必要です。妊娠前期は必要な場合のみ受けるようにしましょう。
さらに、治療の内容とタイミングによっては、胎児に悪影響がある可能性がありますので、特に妊娠前期は注意してください。
妊娠関連がんの発生率
続いては、妊娠関連がんの発生率を解説します。
妊娠中に診断されるがんの発生率は、17〜38 / 100,000出生程度です。出産後1年までに診断されたがんの発生率は、137 / 100,000出生程度です。トータルすると、年間約1000人に1人の割合で妊娠関連がんが発見されていることが分かります。
またこの数値は、妊娠をしていない人を含む女性のがんの発生率とほぼ同じです。
出産年齢との関係
次に、妊娠関連がんと出産年齢との関係を見ていきましょう。
現在日本では出産年齢が上がっているため、出産関連がんの発生率も上がると考えられています。海外では研究結果も報告されています。妊娠中に受けられる医療サービスも増加していますので、早期に発見し対策していくことが重要です。
日本人に多い妊娠関連がんの種類
続いては、日本人に多い妊娠関連がんの種類を紹介します。
世界の妊娠関連がんの種類は、乳がん、甲状腺がん、子宮頸がん、血液がん、卵巣がん、悪性黒色腫などです。悪性黒色腫は白人に多いがんだと言われています。妊娠関連がんにかぎらず、がんの発生率には地域差があります。
日本の主な妊娠関連がんについて次章で詳しく解説します。
乳がん
日本人に多い妊娠関連がんの種類の1つ目は、乳がんです。乳がんとは、乳房の組織にできる悪性腫瘍のことです。女性に最も多いがんとして知られています。
乳がんの主な症状を解説します。
- 乳房のしこり
- 乳房のくぼみ
- 乳頭や乳輪のただれ
- 左右の乳房の形が非対称になる
- 乳頭分泌
など。
子宮頸がん
日本人に多い妊娠関連がんの種類2つ目は、子宮頸がんです。
子宮頸がんは、子宮の入口にある、子宮頚部にできる悪性腫瘍です。内診などで比較的早期に発見されやすいがんですが、奥の部分にできると発見が難しいこともあります。
また、早期にはほとんど症状がないため、発見が遅れてしまうケースもあります。子宮頸がんの進行時の症状を解説します。
- おりものの以上
- 不正出血
- 下腹部の痛み
など。
悪性血液腫瘍
日本人に多い妊娠関連がんの3つ目は、悪性血液腫瘍です。
悪性血液腫瘍(悪性リンパ腫)は、血液内の細胞などががん化してできる悪性腫瘍です。白血球の中のリンパ腫ががん化することを、ホジキンリンパ腫と言います。ホジキンリンパ腫は、他の悪性血液腫瘍よりも予後が良いとされていますが、研究されたデータが少なく確定的なことは言えません。悪性血液腫瘍の症状を解説します。
- リンパが集中している部位の腫れ・しこり
- 痛み
- 発熱
- 発疹
- 皮膚の腫瘤
など。
妊娠関連がんの治療について
続いては、妊娠関連がんは治療可能であることを解説します。
妊娠の継続や出産によって、がんが進行したり、再発率が高まったりすることはありません。安全を配慮した上で、過不足のない治療をすることが大切です。
まずは母体優先ですが、本人や家族の希望を含めて判断することを推奨します。中絶をするケースもある一方で、治療を行いタイミングをみて出産するケースもありますので、よく家族で話し合うことが重要です。
治療の種類と注意点
次に治療の種類ごとに、概要と妊娠関連がんの場合の注意点を紹介します。
次章以降で各治療法の注意点を解説しますので、参考にご覧ください。
化学療法(抗がん剤治療)
化学療法(抗がん剤治療)の概要を解説します。化学療法(抗がん剤治療)は、薬物療法の一つです。抗がん剤は母体・胎児それぞれに対し別の毒性がありますが、時期を選べば妊娠中に投与できる抗がん剤もあります。
ただし他の薬物療法に当たる内分泌療法(ホルモン療法)や分子標的療法は、妊娠関連がんの場合推奨されません。鎮痛剤や制吐剤などを使い症状を和らげる支持療法については、妊娠関連がんの場合でも大きな問題はないとされています。信頼できる医療関係者とよく相談の上、使用する薬剤を検討しましょう。
化学療法(抗がん剤治療)の注意点は、薬剤の毒性です。母体には骨髄抑制、心毒性、腎毒性などの悪影響を及ぼす可能性があります。分娩前後に骨髄抑制が生じないよう、分娩前2週間は化学療法を避けることを推奨します。
一方胎児には奇形、成長への影響、汎血液減少などの悪影響を及ぼすケースがあると報告されています。胎児の奇形リスクを避けるために、妊娠初期は化学療法を避けましょう。
手術療法
次に、手術療法の概要を解説します。
手術療法とは、がんやがんのある臓器を切り取る方法です。手術療法による利益が大きい場合は、妊娠関連がんでも、週数に関係なく行うべきだとされています。産科医療体制の整った病院で行うのが望ましいでしょう。
手術療法の注意点を解説します。
妊娠初期は流産の可能性が高まってしまう可能性があります。妊娠後期は手術時の麻酔薬の影響が大きくなりますので、できれば妊娠中期に行うのが望ましいでしょう。
放射線療法は原則NG
放射線療法療法の概要を解説します。
放射線療法は、がんの部分に放射線を当てて治療する方法です。胎児が被ばくするため奇形リスクが高まるなどの可能性があり、妊娠関連がんの場合は望ましくない治療法として知られています。局所的な照射で済み、胎児への影響が少ないと判断できる場合には、稀に選択されることもあります。
妊娠期間別の推奨治療
続いては、時期別に受けられる治療を紹介します。妊娠期間別の推奨治療は、以下の通りです。
- 妊娠初期:手術療法(利益が大きいと判断した場合のみ)
- 妊娠中期:手術、抗がん剤治療(毒性の問題がないものに限る)
- 妊娠後期:手術、抗がん剤治療(毒性の問題がないものに限る・分娩前は避ける)
前期 | 中期 | 後期 | ||
検査 | 超音波検査,針生検,マンモグラフィ | ◯ | ◯ | ◯ |
造影剤を使用しないCT検査・MRI検査 | △
|
◯ | ◯ | |
CT造影検査 | △ | △ | △ | |
MRI造影検査 | ×(△)
|
×(△) | ×(△) | |
手術 | △ | ◯ | ◯妊娠31週まで | |
抗がん薬治療
(化学療法) |
アンスラサイクリン系薬剤・アルキル化薬 | × | ◯ | ◯妊娠34週まで |
タキサン系薬剤 | × | △ | × | |
メトトレキサートなど | × | × | × | |
分子標的治療 | トラスツズマブ | × | × | × |
ホルモン療法 | × | × | × | |
放射線療法 | × | × | × |
免疫治療という選択肢
妊娠関連がんに対する免疫治療について解説します。
免疫チェックポイント阻害薬や免疫細胞療法を合わせて免疫治療と呼びます。重篤な副作用が少ない治療法として知られており、まれに軽い発熱、発疹などが出る可能性はありますが、過度な心配は必要ありません。他の治療法と組み合わせることも可能です。
免疫細胞療法には、樹状細胞ワクチン療法・活性化Tリンパ球療法・アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)・ガンマ・デルタT細胞療法(γδT細胞療法)・6種複合免疫療法などがあります。
各治療法の特徴は、以下の通りです。
樹状細胞ワクチン療法 | 樹状細胞ワクチン療法とは、樹状細胞の働きを活かした免疫治療です。樹状細胞は、がんの目印を最初に体内で認識し、その情報をリンパ球に伝える役割を担っています。樹状細胞ワクチンを使うがんワクチン療法は、効果が証明されていない免疫療法で、保険診療は適応されません。 |
活性化Tリンパ球療法 | Tリンパ球は、樹状細胞からの指示を受けて、がん細胞を攻撃します。
活性化Tリンパ球療法では、Tリンパ球を培養し増殖させ、さらに攻撃力を高めたものを体内に戻す治療法です。 |
アルファ・ベータT細胞療法 | アルファ・ベータT細胞療法とは、自己免疫力を高めることでがんを小さくしたり、がんが大きくなるのを遅くしたりと、免疫機能が働きやすい環境を作ることを狙った治療法です。アルファ・ベータT細胞療法は、さまざまな医療機関で行われており、安全性も高いと言われています。 |
ガンマ・デルタT細胞療法 | ガンマ・デルタT細胞療法とは、ガンマ・デルタ型のT細胞受容体を持つT細胞を活性化したものを利用する治療法です。ガンマ・デルタT細胞は、より的確にがん細胞を見つけて攻撃する効果があります。 |
6種複合免疫療法 | 6種複合免疫療法とは、免疫細胞を一度体外へ取り出し、活性化・増殖させて体内へ戻す療法です。役割が異なる6種類の免疫細胞が1つのチームとなって働くことで、高い効果が期待できます。 |
まとめ
今回は、妊娠中のがん治療について解説しました。
妊娠中のがん治療では、母体優先で最適な治療法を検討し、本人や家族の希望を含めて判断することが重要です。抗がん剤治療や手術療法では、安全を配慮した上で、過不足のない治療をすることが大切です。中でも放射線療法は、胎児が被ばくしてしまうリスクがありますので、妊娠関連がんでは望ましくないと考えられています。医師や看護師、家族と相談の上、納得のいく治療方法を検討しましょう。
福岡同仁クリニックは、がん免疫療法専門の再生医療クリニックとして、6種複合免疫療法を提供しています。これまで多くの患者さんのがん治療を行い、患者さん一人ひとりに合わせた治療法をご提案しています。
6種複合免疫療法についてさらに詳しく知りたい方はこちらよりご確認ください。
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